概要

 村上木彫堆朱(むらかみきぼりついしゅ)は、新潟県村上市で受け継がれる木彫りと漆塗りの工芸です。おぼろ月の光のようなマットな風合いは、使い込むほどに深みのある艶(つや)へと変化していきます。

歴史

・江戸時代の享保年間(1716年~1736年)、村上藩の奨励で漆樹の栽培、漆工、彫刻、建築がすでに発達していたといわれています。
・江戸時代の文政年間(1818年~1830年)、江戸詰めの村上藩士が木彫堆朱、堆黒(ついこく)を学び、帰藩後に村上在住の藩士や町方の工匠達に普及しました。
・明治以後、地場産業として発達しました。明治の当時は注文販売制であり、店頭で販売されるようになったのは大正以降といわれています。

特徴

・木地は、朴(ほお)、栃(とち)、桂(かつら)などが用いられます。
・木彫りは、各種の刀を使い分けて行います。代表的な図柄には、中国画風の楼閣山水(ろうかくさんすい)、花鳥、牡丹唐草(ぼたんからくさ)などがあります。また、連続した細やかな幾何学模様である地紋(じもん)には、青海波(せいがいは)、七宝菊(しっぽうぎく)、網代(あじろ)など多くの種類があります。
・漆塗りは、何回も塗り、研ぎの作業を繰り返して行います。指先に漆をつけて塗る指頭塗り(しとうぬり)は、細かくかつ深く彫られた木地にしっかり漆を塗るために使われる技法です。

種類

・堆朱:木彫りの上に数回漆を施して、朱にて塗り上げ、塗りの最後につや消しで仕上げた代表的な技法です。村上木彫堆朱を見たことがある方が思い浮かべるのは、おそらくこの堆朱ではないかと思います。
・堆黒:木彫りの上に数回漆を施して、中塗りから黒漆を用い上塗りで黒呂色(くろろいろ)漆にて塗り上げた技法です。
・朱溜塗(しゅだめぬり):堆朱の工程の艶消し後、更に溜漆を数回塗り重ねて丁寧に研磨して仕上げる技法です。自然な飴色の光沢が綺麗です。
・色漆塗(いろうるしぬり):上塗りに数色の色漆を用いて鮮やかに塗り上げる、色彩豊かな技法です。
・金磨塗(きんまぬり):色漆塗の技法に更に金箔を貼り、その上に色漆を塗り重ね丁寧に研磨し、表面にうっすらと金箔を研ぎ出す技法です。
・三彩彫(さんさいぼり):彫漆またはむき彫りとも呼ばれ、彫りのない木地に朱・黄・緑の順に3色の漆を塗り重ね、最後に黒を塗り上げてから表面を掘り下げる技法です。

公的指定

・昭和30年(1955年)2月、新潟県の「無形文化財」に指定
・同年3月、文化庁長官により、国の「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」に選択
・昭和51年(1976年)2月、通商産業大臣(現:経済産業大臣)により、「村上木彫堆朱」として国の「伝統的工芸品」に指定

体験・鑑賞

 村上市内の「村上木彫堆朱会館」は、多彩な作品と資料を展示しています。事前申し込みで箸の彫刻体験も受け付けています。土日祝日の営業日には職人による解説が聞けることもあります。

 村上木彫堆朱会館の住所:新潟県村上市松原町3丁目1番17号