
石油とガソリンは違う――それは分かっていても、いざ人に説明しようとすると少しあいまいになりがちです。この記事では、石油とガソリンの違いを入り口に、石油の分類を基本から整理します。ガソリン・灯油・軽油・重油の引火点や比重、精製の手間、品質劣化と備蓄まで含め、まとめておさらいします。
目次
●まず結論:石油は大分類、ガソリンはその一部
●原油から石油製品はどう分かれるのか
●主な石油製品の比較
・ガソリンについて
・灯油について
・軽油について
・重油について
●「石油の備蓄」は、何を備蓄しているのか
●よくある疑問
●まとめ
●参考リンク
まず結論:石油は大分類、ガソリンはその一部
石油は「原油」と「石油製品」をまとめた呼び方です。原油は地下から採れる加工前の油で、それを製油所で蒸留・精製してできる石油製品のひとつがガソリンです。したがって、「石油=ガソリン」ではなく、「石油の中にガソリンが含まれる」という関係になります。
また、ガソリンだけでなく、灯油・軽油・重油も石油製品です。ガソリンは主にガソリン車、灯油は暖房や給湯、軽油はディーゼル車、重油は船舶、工場、大型ボイラ、発電などで使われます。
さらに、ジェット燃料、LPG、潤滑油、パラフィン、アスファルトなども石油製品に含まれます。
原油から石油製品はどう分かれるのか
製油所ではまず原油を350℃以上に熱し、蒸留塔で沸点の違いを使って、LPガス、ナフサ、灯油、軽油、重油などに大まかに分けます。その後、脱硫、分解、改質といった工程を通して、用途に合った石油製品にしていきます。
原油は一種類の油ではなく、軽い成分から重い成分まで、さまざまな性質のものが混ざった液体です。これを熱していくと、先に取り出される軽い側の成分と、後から取り出される重めの成分に分かれます。ガソリン・灯油・軽油・重油の違いは、この「どのあたりで取り出されるか」と、その後にどんな調整をするかで生まれます。
主な石油製品の比較
| 区分 | 主用途 | 引火点 | 比重・密度 | 精製の手間 | 品質劣化と備蓄 |
| 原油 | 地下から採れる加工前の油。石油製品の原料 | 種類差が大きい | 種類差が大きい | 精製前の原料 | 石油製品よりも長期備蓄に向く |
| ガソリン | 主にガソリン車向け | -40℃以下 | 0.70〜0.78g/cm3 | 高め | 揮発と酸化の影響を受けやすく、ガム生成や詰まりにつながりやすい |
| 灯油 | 暖房・給湯向け | 40〜75℃ | 0.76〜0.83g/cm3 | 中くらい | 揮発は比較的小さいが、古くなると燃焼不良や点火・消火不良が起きやすい |
| 軽油 | 主にディーゼル車向け | 45〜110℃ | 0.80〜0.86g/cm3 | 中〜やや高め | 揮発は比較的小さいが、低温特性や性能変化で機器トラブルが出やすい |
| 重油 | 船舶、工場、大型ボイラ、発電向け | 種類差が大きい。A重油は65℃未満の場合あり、LSC・MSC重油は70〜230℃の例あり | おおむね0.82〜0.95程度、製品例では0.87〜1.00g/cm3 | 低め〜中程度 | 揮発は小さいが、粘度・流動性・保管条件の影響を受ける。A重油は3か月目安の使用推奨あり |
※引火点:可燃性の蒸気が空気と混ざり、 点火源があるときに着火しうる最低の温度。発火点とは違うため、この温度でも火元(点火源)がなければ燃えません。
※精製の手間:ここでは、必要工程から見た相対評価です。ガソリンが「高め」なのは、改質や分解の比重が大きいからです。灯油は比較的シンプルですが、軽油は脱硫や性状管理が重要です。石油連盟は、ガソリンと軽油について2005年からサルファーフリー(硫黄分10ppm以下)の製品を供給していると説明しており、こうした品質対応も工程負荷に関わります。重油は製品差が大きいものの、A重油は比較的二次処理の比重が大きくなります。
ガソリンについて
ガソリンは、原油を熱して成分ごとに分けたとき、比較的早い段階で取り出される、軽くて燃えやすい石油製品です。自動車燃料を中心に使われる石油製品です。
ただし、ガソリンは軽い成分をそのまま抜き出しただけではありません。ナフサ留分を自動車用ガソリンとして使えるようにオクタン価を高める「改質」や、重油留分をガソリン基材などに変える「分解」といった工程が関わります。つまり、ガソリンはかなり手をかけて自動車用燃料に仕上げる製品です。
ガソリンは揮発と酸化の影響を受けやすく、ENEOSは酸化劣化物やガム質が燃料系統の腐食や詰まりにつながると説明しています。
灯油について
灯油は、ガソリンより後、軽油より前に分かれる石油製品で、主に暖房用や給湯用などに使われる石油製品です。
灯油の特徴は、ガソリンほど引火しやすくないことです。灯油は引火点が40〜75℃と、常温より高く、石油製品の中では比較的扱いやすい部類です。
石油連盟は灯油の使用推奨期間を6か月とし、それを超えると酸化が進み、場合によっては燃焼不良などの不具合を起こすおそれがあると案内しています。ENEOSも、灯油は翌年に持ち越さないよう勧めています。
軽油について
軽油は、灯油の次に分かれる石油製品で、主にバスやトラックなどのディーゼルエンジン車に使われる石油製品です。
軽油で重要なのは、ガソリンのような揮発性の高さよりも、ディーゼル燃料としての性能維持です。低温でパラフィン分が析出し、燃料フィルター閉塞などのトラブルが起こることがあるとされています。
また、石油連盟は軽油の使用推奨期間を6か月としています。ガソリンほど揮発しませんが、低温特性や性能変化が問題になりやすく、季節や地域に合わない軽油では機器トラブルにつながることがあります。
重油について
重油は、より重い側の石油製品で、発熱量が高く、主に船舶用や、工場、大型ボイラ、発電など産業用に使われる石油製品です。
重油は粘度によってA重油、B重油、C重油に分かれます。石油連盟によると、A重油は重油の中では比較的軽く、小型ボイラや漁船などにも使われ、C重油は粘度が高く、火力発電や大型船舶向けに使われます。B重油は中間ですが、現在はほとんど生産されていません。
石油連盟は、A重油について使用推奨期間を3か月とし、この期間を超えて保存するとセジメントが増加し、燃料フィルターの目詰まりなどの不具合を引き起こすおそれがあると案内しています
「石油の備蓄」は、何を備蓄しているのか
日本の石油備蓄は、国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄の3つの方法により実施しています。
国家備蓄は国が保有する備蓄、民間備蓄は石油備蓄法に基づいて石油精製業者等が義務として保有する備蓄です。産油国共同備蓄は、日本国内のタンクに産油国国営石油会社が原油を保有し、危機時には日本企業が優先供給を受けられる仕組みです。
備蓄量は2026年1月末現在、合計248日分となっています。
・国家備蓄:原油4,177万kL・石油製品142万kL
・民間備蓄:原油1,278万kL・石油製品1,500万kL
・産油国共同備蓄:原油191万kL
備蓄が原油中心なのは、必要に応じて製油所でガソリン・灯油・軽油などへ振り分けやすいからです。
他方、東日本大震災の経験から、原油だけでなく、そのまま現場で使えるガソリンや灯油などの石油製品備蓄も重要だと分かりました。実際、資源エネルギー庁は震災を踏まえて政府の製品備蓄を増強したと説明しています。つまり、日本の石油備蓄は『原油中心だが、災害対応では製品備蓄も重要』という二層構造となっています。
よくある疑問
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石油ストーブは灯油ストーブとは違いますか?
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家庭用暖房の文脈では、同じものと考えて差し支えありません。燃料は灯油ですが、器具の呼び方としては「石油ストーブ」が一般的で、JISでも「自然通気形開放式石油ストーブ」「密閉式石油ストーブ」など、「石油ストーブ」という名称が使われています。
この呼び方には歴史的な経緯もあります。日本では戦後しばらく、暖房や家庭用燃料の世界で主に石炭が使用され、石炭ストーブという呼び方が普通に使われていました。その後、高度経済成長期にエネルギー利用が石炭から石油へ大きく変化し、石炭を使うストーブと区別する必要から、「石油を使うストーブ」=石油ストーブという呼び名が定着していったと考えられます。
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日本でも石油は取れますか?
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取れますが、ごくわずかです。資源エネルギー庁は、日本の原油自給率は長らく0.5%未満の水準にあると説明しており、日本で使う原油のほとんどは輸入に頼っています。
国産原油の主要産地としては、新潟、秋田、山形、北海道が挙げられます。採れた国産原油は、主に石油元売り会社や商社に販売され、製油所で精製されてガソリン、灯油、軽油、重油などの石油製品になります。

通りすがりさん 新潟県では古くから原油・天然ガスの開発が行われています。
その生産量は令和5年現在、国内1位です。
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日本の石油はどこから輸入していますか?
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日本は、主にアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、クウェート、カタール、オマーンなどの中東諸国から原油を輸入しています。資源エネルギー庁の2024年データでは、UAEが43.7%、サウジアラビアが40.0%で、この2国だけで8割超を占めます。日本の原油輸入の中東依存度は95.1%で、輸入先は今も中東に大きく偏っています。
そのため、現在の中東情勢の悪化は、そのまま原油価格や調達コストの上昇圧力になり、ガソリン価格にも波及しやすい構造です。
なお、2026年3月時点のガソリン価格は、中東情勢だけでなく制度面の影響も受けています。燃料油価格定額引下げ措置の公式案内では、ガソリン向けの補助は2025年12月30日で終了しており、2025年12月31日以降も定額支援が続いているのは軽油・灯油・重油などです。そのため、足元では原油高や供給不安の影響が、ガソリン価格により表れやすくなっています。
まとめ
石油とガソリンの違いを一言でいえば、石油は大分類、ガソリンはその中の一製品です。石油には、地下から採れる原油と、そこから精製される石油製品の両方が含まれます。原油を製油所で処理すると、ガソリン、灯油、軽油、重油などに分かれ、それぞれ引火しやすさや重さ、用途、必要な精製工程が異なります。
参考リンク
2026-03-18:初版公開


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