
古い村上木彫堆朱の花瓶や小箱を、職人さんに教わりながらお手入れしました。
長く使われてきた品には、表面のくすみだけでなく、彫りの奥や細かな部分にも汚れが残っていることがあります。今回は、作業中の様子も交えながら、お手入れ前とお手入れ後で、花瓶や小箱の見え方がどのように変わったかをご紹介します。
目次
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汚れを落とす|彫りの奥まできれいにする工程
お手入れは、村上市の職人さんに教わりながら行いました。
まずは、汚れを落としていく作業の様子から紹介します。
はじめに、全体のホコリを軽く払い、水で表面の汚れを落とします。村上木彫堆朱を含む漆器は、ひび割れや漆の剥がれなどがなければ、水で洗うことができます。
ただし、長く水に浸けず、洗った後はすぐに水気を拭き取ります。
汚れの種類にもよりますが、水洗いできれいに落ちることも少なくありません。
今回はその後、砥の粉と炭粉を水でなじませたものを使って、彫りの奥や細かな部分の汚れを少しずつ落としていきました。
細かな部分には、人毛を紐で巻き固めた棒状のブラシを使いました。文様の凹凸に沿ってこすり、同じところばかり繰り返しこすらないように、全体のバランスを見ながら進めていきます。



汚れが落ちたら布で拭き、一晩置いて水気を乾かしました。
実際に作業してみると、表面を軽く拭くだけでは分からない汚れが、彫りの奥や縁の部分に残っていることがよく分かりました。手を入れることで、文様の輪郭や彫りの深さが見えやすくなっていきます。
なお、今回の内容は、職人さんに教わりながら行ったお手入れの記録です。古い漆器は状態によって扱い方が変わることもあるため、自己流で強くこすったり、長く水に浸けたりせず、不安がある場合は職人さんに相談することをおすすめします。
撮影日:2026-05-29
Instagram投稿日:2026-05-30
拭き漆で仕上げる|艶と色味を整える工程
汚れを落として一晩乾かすと、当初の目立つ汚れやくすみはすっかり落ちていました。



ここから、仕上げとして「拭き漆」を行いました。
拭き漆は、漆を薄くのばしてから余分な漆を拭き取り、表面を整えていく作業です。今回は、漆の準備を塗師の職人さんにお願いしました。



拭き漆の作業中は手に漆が付いていたため、生漆を塗って拭き上げていく途中の写真は撮影できませんでした。
なお、拭き漆は漆を扱う作業のため、かぶれなどに注意が必要です。家庭で気軽に試すお手入れというより、職人さんの指導の下で行う仕上げとして紹介しています。
撮影日:2026-05-30
Instagram投稿日:2026-06-03
漆風呂から取り出す|仕上がった花瓶と小箱の様子
拭き漆をした花瓶や小箱は、漆風呂の中で乾かした後に取り出します。

漆風呂から出した後の花瓶や小箱は、汚れを落とした直後とはまた違い、表面の艶が増し、色味も深く見えるようになりました。彫りの奥まではっきり見え、文様の輪郭も分かりやすくなっています。



古いものを「新品のように戻す」のではなく、使い込まれてきた雰囲気はそのままに、汚れを落とし、色艶を整えることで、より深い味わいのある姿になりました。
撮影日:2026-06-03
Instagram投稿日:2026-06-06
ビフォーアフターで見比べる|小さい花瓶がどう変わったか
ここでは、お手入れ前から仕上がりまでの変化を、小さい花瓶を例に写真で見ていきます。
並べて比べると、汚れを落とした段階と、拭き漆で仕上げた段階では、印象が大きく変わることが分かります。



お手入れ前は、全体にくすみが目立ち、彫りの奥や縁の部分にも汚れが残っていました。汚れを落として乾かした段階では、文様の輪郭が見えやすくなり、全体の印象も明るくなっています。
さらに拭き漆で仕上げた後は、古い品らしい落ち着きは残しながら表面の艶が増し、色味が深まって、彫りの表情もよりはっきり見えるようになっています。
職人仕事を支える道具たち|漆刷毛やヘラに残る仕事の跡
今回のお手入れを教わった際、村上市の塗師の職人さんの作業場で、漆仕事に使う道具も見せていただきました。



「泉清吉謹製」と記された漆刷毛は、漆を塗るための専門の刷毛です。泉清吉刷毛は、江戸時代から続く漆刷毛の系譜を受け継ぐ道具とされ、人毛を用いることも特徴のひとつです。
作業場には、使い込まれた刷毛やヘラなどの道具もありました。漆を塗る、整える、汚れを落とす。ひとつひとつの工程を支える道具には、長年の仕事の跡が残っています。
形や大きさが少しずつ違うヘラには、重なった色や漆の跡が見られ、日々の作業の積み重ねが感じられました。
※作業場では、許可をいただいて撮影しています。
撮影日:2026-06-01
Instagram投稿日:2026-06-11
まとめ|古い村上木彫堆朱は、手入れで表情が変わる
今回のお手入れでは、古い村上木彫堆朱の花瓶や小箱が、汚れ落としと拭き漆によってどのように変わるのかを見てきました。
水で表面の汚れを落とし、彫りの奥や細かな部分まで少しずつ手を入れていくと、文様の輪郭や彫りの深さが見えやすくなっていきます。さらに拭き漆で仕上げることで、艶が増し、色味にも深みが出ました。
新品のように戻すというより、長く使われてきた品がもともと持っていた表情を、もう一度見えやすくする。今回のお手入れは、そうした作業だったように感じます。
古い村上木彫堆朱には、使われてきた時間による味わいがあります。状態を見ながら適切に手を入れることで、その魅力を残しながら、これからも楽しめる姿に近づけることができるのだと感じました。
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・村上木彫堆朱とは|歴史・特徴・種類・手入れを分かりやすく解説
・村上木彫堆朱 作品ギャラリー|丸盆・銘々皿・茶托・茶櫃・花瓶など
参考リンク
本記事の初版公開:2026-06-15
この記事が参考になった方へ
この記事を書いた、み喜森(Mikimori)店主です。
新潟県村上市の伝統的工芸品「村上木彫堆朱」をはじめ、天然漆・天然木の工芸品をセレクトしてご紹介しています。
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